ペットフードの機能性表示食品?

人間の食品には機能性表示食品と呼ばれるものがあります。「ダイエットに最適!」「美肌成分配合!」と書かれたもののことですね。同じように、わんちゃん、ねこちゃんのご飯を買いに行くと、「ダイエットのためのフード」「毛玉ケア」などが書かれているペットフードを見かけます。

ただしペットフードは人間の法律の中で食品とはされないため、機能性表示食品というくくりには入りません。

健康な毎日を送りたい人におすすめの機能性表示食品

そもそも機能性食品とは?

まず人間の基準の話をします。

機能性表示食品とは消費者庁で保健機能食品と呼ばれる括りにあり、特定保険用食品(トクホ)、栄養機能食品と並んで特別な効果があるという表記を許されたものです。

消費庁のHPの定義からすると『国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります』と定義されています。

大雑把にまとめると「科学的根拠を消費者庁に説明できれば国の審査なしで食べた時に機能があるって書いていいよ」というわけですね。ただし、「高血圧を治療する機能があります」といった、薬と間違えられるような表記は医療品医療器具等法、景品表示法、食品表示法などに引っかかるのでNGです。

許されるのは「血圧が気になる方に」「血圧を下げる効果があるとされています」などの言い回しです。また「本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません」と、薬のように治療の効果がないということを必ず書くように定められています。

一方ペットフードの場合・・・

ペットフードは食品として扱われませんが、犬猫のペットフードの製造販売についてはちゃんと厳しい法律があります。ペットフード安全法、景品表示法、医薬品医療品等法です。これを守れないものはペットフードとして販売してはいけません。

冒頭に書いた通り、ペットフードには機能性表示食品に相当する法律はありませんが、ペットフード関連の世界では「機能性フード」「機能性ペットフード」などと呼ばれるくくりが生まれつつあります。将来的にはもしかしたら統一した名前が決まるかもしれませんが、今は言葉としての定義がないので、ここでは日本ペットフード学会のHPから名称をお借りして「機能性フード」という呼び方をします。

機能性フードの種類

犬のペットフードでは「デンタルケアに最適!」「消化吸収のサポートをします!」といった表記をよく見かけますね。

猫のペットフードでは「毛玉ケア」「尿のpHを酸性側に傾ける(直接の病名を書かない)」「ストレスケアのために」といったものが多いです。

これらは実際に有効と言われる成分を配合したり調整したりしています。

ですがペットフードの成分については景品表示法で細かく決められているので、その法律の範囲内で作られているものです。

「ケア」や「サポート」という表記がよく使われるのは、「尿路結石が予防できます」といった表記ができないからです。「サポート」も病気や臓器を直接示すことはNGです。人間の機能性表示食品のような「○○に対する機能があります」という言い回しも使えないことになっています。

実際のところ、機能性フードはどのくらい効果があるかわかりません。獣医師に「このフードで大丈夫でしょうか」と聞いてもだいたい「食べるならそれでいいと思います」みたいな答えが返ってきます。獣医師の感覚では「健康な子なら普通のペットフードを食べていればいい」なのです。

高いとか安いとか、ヒューマングレードとか国産とかナントカケアといった表記があっても、ペットフードとして販売されているものを正しくあげられているなら問題ないと判断します。ペットフードの中でも総合栄養食と書かれているものは栄養面で完璧ですから、『健康な動物』が『総合栄養食』を『正しい量摂れている』なら、獣医師からすると文句なしなのです。

ペットフードの中の例外

例外として、ペットショップの店員から「獣医師がいないと説明できない」と言われるフードがあります。特別療法食です。法律上は獣医師の許可がなくても販売はできるのですが、治療に使われる(獣医療的には食事療法と言います)ものですから、獣医師免許を持たない人が「病気の治療ができます」といった効果を説明してはいけないという決まりがあります。

機能性フードとの違いは『病気の動物』に食べさせることを前提に栄養の配合を変えている点です。もちろんこれも医薬品ではありません。治療効果があることは書けませんので、パッケージには「〇〇サポート」「〇〇ケア」といった表記がされています。

日本には特別療法食に関する法律はないので、一般財団法人の獣医療法食評価センターによって品質のお墨付きをもらったものとなります。日本ではロイヤルカナン、ヒルズ、イースターなどの会社から販売されていますね。

特別療法食は『健康な動物』にとっては栄養が足りないものとなります。例えば猫の腎臓病や犬の肝臓疾患に関するものは低蛋白質性、体重制限用なら低脂肪性なので、長く食べさせると体調を崩したり、痩せ過ぎたりすることがあります。

人間は自分で不調に気がつけますが、犬や猫はなかなか不調を訴えませんので、飼い主が異変に気がつかないこともあります。ペットは自分で栄養管理をすることができないのです。大事な家族を苦しめないためにも、特別療法食を与える時には獣医師の指導を定期的に聞くようにしてください。

じゃあ、機能性フードは与えても意味がない?

意味がないと断定はできません。ですが効果があるとも言えません。どんなものを食べようと結局は人間と同じで、正しい食事の量とカロリー、必要な栄養を十分に摂ることが何よりも大切なことになります。おやつを食べ過ぎたら太るのは動物も人間も同じです。

また、わんちゃん猫ちゃんには食べたら毒になるものがあります。玉ねぎやチョコレートは有名ですね。また無害と言われる人間の食べ物もペットフードと比べれば塩分が多過ぎたり栄養バランスが悪いものなので、あくまでも健康を維持するだけなら総合栄養食だけをずっと与える方が無難なのです。

結局は、愛する家族の幸せを考えたものが一番

日本はまだペットフードに対する法整備の課題が多いです。トクホのような制度はありませんし、犬猫以外のペットフードの規定は足りません。ですがサプリメントを飲ませること、病気予防ができそうなフードをあげること、これらが全て無駄な行為とは言えないと思います。

病気にさせないように考えるのは大切ですし、ペットの健康を守るのは飼い主の責任です。愛する家族の幸せを一番に考えてあげてください。